同窓生は今

69期生に聞く ~空自一般幹部候補生~

2025.11.01

「Leader of Leaders」

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航空自衛隊幹部候補生学校
 第3中隊第1区隊
  一般幹部候補生 空曹長 坂上 巧真

  航空宇宙工学科 陸上競技部主将

1.はじめに
 防衛大学校(以下、「防大」という。)69期航空要員卒業生を代表して本寄稿文を執筆する機会をいただけたことに感謝します。本稿を通じて、後輩達に今後の希望を与え、諸先輩方へ私たちの頑張りをお伝えすることができれば幸いです。
 航空自衛隊幹部候補生学校(以下、「幹候校」という。)の幹部候補生の課程は今年度から防大卒のB学生と一般大卒のU学生を一体化し、Leaderを意味するL課程となりました。B学生とU学生の一体化は既に始まっていましたが、B学生とU学生の繋がりをより強くする意味を込めてL課程と名称が変更されました。

2.防大と幹部候補生学校の違い
 防大と幹候校の違いを教育面と生活面に分けて考えてみました。防大生は防大時代に防衛学、リーダーシップ、航空自衛隊について座学にて知識を身に付けることが多かったです。教育で学んだことを実践する場所は学生舎や校友会等のみであり、実践する機会は全員に平等ではなく、実践することなく卒業した学生もいました。また、学んだ知識をアウトプットする機会が少なく、共有する場面も少ないため知識を知識のまま終わらせることが多かったです。幹候校に入校する前の私は幹候校では防大で学んだことを復習するだけになってしまうのかと不安を抱いていました。U学生と課程を同じくすることで授業の内容が防大時代の復習になり、新しく考えることは少なくなり幹候校の期間は足踏みをするだけの期間になってしまうのかと不安になっていました。しかし、入校後その不安を感じることは全くありませんでした。授業では防大で学んだことを実際に活用し、思考を深堀する教育を多く受けることができました。教育の内容としては、航空自衛隊の概要、統率、国際情勢を踏まえた空自の今後や統率の在り方を討論や議論を通じて考えを深め共有することです。防大時代に学生舎運営や校友会運営で得た経験を部隊における部下指導や統率をするためにはどのようにしたらよいかとの考えに置き換える中、同期との討議等を通じ、自身の考えをより深くすることができました。加えて、U学生と一緒に受ける訓練、教育についてはU学生の自衛隊に染まっていない考え方や視点に触れることができました。ひとり一人が異なる背景を持っている中で、様々な価値観に触れ合うことができます。
 続いて、生活面についてです。防大では上下ともに3歳程度しか年齢は離れておらず同世代が主に同期でした。しかし、幹候校では自身と20歳近く離れた学生も同期として生活を共に過ごしています。部内選抜のI課程の方の部隊勤務の話を通じて実際の部下指導の実例を参考にすることに加え、係勤務を通して年の離れた同期に対する指導を実践する機会も得ることができました。防大時代の指導では下級生指導が主であるため社会のこともわからない、自衛隊の実情も分からない学生を相手にしていました。I課程の同期を指導していく上では、自衛隊の先輩である方に対して自身の考えの合理性、有用性を説明する必要がありました。「組織として強くなるにはこのやり方が必要である」と考えを話したときに「部隊ではこのやり方を実践していない」と衝突することもありました。防大時代の衝突とは違う衝突を何度も経験しました。幹候校に所属する全員が幹部になるため、指導の目的を理解して、目標を達成する必要があることは理解していますが、曹士を経験しているI課程の方には「正論だけじゃ人は動かせない」と助言をいただく機会もありました。幹部になるための教育を受け、訓練を実施してきた中で実際に部下を経験した人を初めて相手にし、学んだ知識を実践する機会を得ることができました。

3.L課程としての実情
 L課程として5か月を経過した私なりの感想を述べます。L課程としてBUを一体化させていても課程序盤は意識の差が顕著に表れます。B学生は防大で経験した組織の一員の重要性、国防の任務の重さ、命の重さを理解しています。そのため自衛隊に求められる規則や服務の重要性を認識しています。しかし、U学生はその認識を入校後に初めて感じます。B学生がU学生を引っ張るということが序盤はB学生に対して求められることであり、積極的なリーダーシップの発揮をしていかなければなりませんでした。しかし、U学生の持つ価値観が新たな視点をB学生にもたらし、B学生のリーダーシップにU学生が追いつくことがL課程としてBU一体化したことによる化学反応だと考えます。同じA幹部として今後の航空自衛隊を引っ張っていく存在だからこそ、同じ時間を共有し苦楽を共にすることができてよかったと感じています。どちらの存在もお互いを高め合うには必要な存在であり、航空自衛隊の組織力の向上には必要不可欠であると感じます。

4.最期に
 防大にて一番学べたことは同期との衝突です。同期とぶつかり合って本音で話したからこそ、より深く考えることができたと感じています。自己を律して幹部となるべく考え方の基盤を確立していくことが大事だと感じました。多くの衝突を経験して何度も間違えることが一番の成長になり、価値ある防大生活にする秘訣だと思いました。そして幹侯校の課程生活の中で一番学べたことも同期との衝突です。年齢の違う同期、背景が全く異なる同期がいるからこそ学ぶことも多く、自己の成長につながると感じました。防大、幹候校ともに同期を大事にしてこれからの課程生活にも全力で臨んでいきます。

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(令和7年10月)

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