同窓生は今

69期生に聞く ~陸自一般幹部候補生(2)~

2025.11.01

「幹部候補生学校に入校して」

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陸上自衛隊幹部候補生学校
 第4候補生隊第1区隊
  一般幹部候補生 陸曹長 麻生 知里

 全国の諸先輩方及び同期生の諸官におかれましては、ご多忙の中、日々の任務にてご活躍のこととお慶び申し上げます。陸上自衛隊幹部候補生学校・第106期一般幹部候補生(防大、一般大等出身者)課程に入校中の防衛大学校本科69期卒業生、麻生候補生です。

 同期とともに新たなる目標を胸に防衛大学校を去ってから早くも5か月が過ぎました。同期達と他愛もないことで笑いあったり、競技会の勝利のために本気でぶつかり合ったり、学生舎運営で共に悩んだりした日々が、今ではとても懐かしく感じます。立派な幹部自衛官になることを目標に前川原駐屯地に所在する陸上自衛隊幹部候補生学校の門を叩いたわけでありますが、幹部候補生学校に入校する1か月前から漠然とした不安感でいっぱいでした。特に、着校日前日は緊張と不安感でほとんど寝付けなかったものです。入校当初は防衛大学校の生活と幹部候補生学校の生活のギャップに戸惑うこともありましたが、防大の同期や一般大学出身の同期達と日々を過ごす中ですぐに慣れていきました。陸上自衛隊幹部候補生学校では初級幹部に必要な実員指揮能力に加え、戦術などの識能教育、高良山登山走、藤山武装障害走など伝統ある行事を通して幹部自衛官として必要な資質を涵養しています。
 この度、小原台だよりに寄稿する機会を頂きましたので、「自律」と題しまして、幹部候補生学校での5か月間の生活で感じたことに焦点を当ててこの場をお借りして述べさせていただきます。幹部候補生学校に入校を控える後輩達の今後の生活を送る上での一助になれば幸いです。
 幹部候補生学校で厳しい生活を送る中で、区隊長に何度も指導された内容が話の題である「自律」についてでした。指導を通じて、「自律」することの必要性と「自律」した幹部自衛官となるために必要な資質を再確認することができたので、この2点について話します。
 一つ目は「自律」することの必要性です。防衛大学校では課目のない時間や昼休みなど自由に使える時間が多く存在しますが、幹部候補生学校ではそれらは存在しないため、限られた時間の中で次の日の準備や各係の業務、整備などをしなければなりません。つまり、自分のやるべきことを確実に認識し、いつまでにやるのか計画を立てて実行することが必要になります。限られた時間の中でやるべきことをやり、個人の時間を作る必要があることから、「自律」は必要になります。
 ほかにも、防衛大学校では週番学生、長期勤務学生などの業務があるように、幹部候補生学校では勤務候補生(区隊当直、内務係、学習係)と各係(教務図書、体育、同期 生会、環境美化など)があります。防大の係業務と幹部候補生学校の係業務の共通している部分は、どちらも指導官や区隊長の指導の下でその業務を行うことですが、大きく違う所は幹部候補生ではただ言われた通り業務を行っても期待した成果は得られないという所です。各係は区隊全体で作業を行った時の時間や点検にかかる時間、その作業の細部着眼などの見積もりを自分自身で立て、区隊全体としてその業務を遂行しなければ、成果は得られません。ここではマネジメント能力と区隊としての「自律」が必要になります。
 ここまでで個人としての「自律」の必要性や区隊としての「自律」の必要性について述べました。続いて、「自律」した幹部になるために必要な資質について三つ述べます。
 第一に、「優先順位」と「集中力」です。幹部候補生学校の場合、やるべきことが多く、目の前のことに順に取り組んでも自分の時間を確保することはできません。そのため、優先順位をつけて最もやるべきことから計画的に集中して取り組むことが必要です。日々このことを意識すれば自然と自身を律することができるでしょう。
 第二に、「マネジメント能力」です。区隊(任官後の部隊)を律するには、相応のマネジメント能力が必要不可欠ですが、これは幹部候補生学校のみで鍛えられる能力ではなく、防衛大学校の生活でも身につく能力であると考えています。例えば、長期勤務学生や校友会の主将、競技会責任者など学生舎生活に積極的に関わっていくことで身につくと思います。長期勤務学生を断ったり、競技会に消極的だったりするとこの資質は身につかないので、意欲的に学生舎生活に関わってみてください。
 第三に、「同期に関心をもつこと」です。人のふり見て我がふり直せとよく聞くと思いますが、まさにその通りで入校当初は分からないことだらけでミスもつきものですが、他人のミスから学べない者はいつまでも成長はできませんし、ましてや関心がなければミスが起こったことにも気づきません。まずは同期に関心を持つこと。そして他人のミスから学ぶことで「自律」することができると思います。
 上記の内容を幹部候補生学校の入校を控える防大の後輩達へ伝えたいこととして述べさせていただきました。私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。しかしながら、私もまだまだ未熟者ですので、今一度、態度を見つめ直し、自分の目指す幹部自衛官像に少しでも近づけるように残りの期間も貪欲に成長できる機会を求めて精進して参ります。

(令和7年10月)

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