同窓生は今

69期生に聞く ~陸自一般幹部候補生(1)~

2025.11.01

「同期の絆と責任の自覚」

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陸上自衛隊幹部候補生学校
 第3候補生隊第1区隊
  一般幹部候補生 陸曹長 山際 宏太

 私は現在、陸上自衛隊幹部候補生学校第106期一般幹部候補生BU課程に入校中の防衛大学校第69期卒業生、機能材料工学科、バドミントン部の山際宏太です。

 私がこれまでの訓練を通じて強く実感したのは『同期の存在の大きさ』です。幹部候補生学校に入校して以来、私たちは厳しい環境の中で共に過ごしてきました。「肉体的にも精神的にもキツイな。」と感じる場面は数多くありましたが、その都度支えとなってくれたのはやはり同期の仲間達でした。訓練や生活を重ねる中で、自分一人では乗り越えられなかったであろう困難を、仲間とともに乗り越えることができた経験は、私にとって幹部になるうえで重要な経験となっています。
 特に印象に残っているのは行進訓練です。背嚢、小銃、装具をつけて長時間にわたり歩き続ける中で体は徐々に疲弊し、足取りも重くなってきました。途中、雨が降り出し、背嚢や装具はさらに重みを増しました。自分の荷物を運ぶだけでも精一杯の者もいる中、同期の中には他人の荷物を肩代わりして歩き続けるものがいました。私は「自分も仲間のためにできることをしなければならない。」と強く感じました。実際に、前に歩く同期が背嚢を背負うのに苦労している場面に出くわしたとき、私は迷わず荷物を代わりにもち、声をかけながら一歩ずつ共に進みました。すると不思議なことに自身の疲労感も軽減されたように感じ気力がわいてきました。仲間を助けるという行為が自分の心を奮い立たせることを、身をもって体験した瞬間でした。
 小隊長を担当した際には、ただ自分が歩くだけではなく周囲を気にかけ全体のペースを整える責任を負いました。声をかけて励まし、列が乱れそうになれば修正を図りました。仲間の表情や動きを観察しながら全体をまとめることは容易ではありませんでしたが、その役割を果たすことで自分自身も大きく成長できたと感じています。仲間を意識して行動することの重要性を責任ある立場を通じて深く理解することができました。
 行進訓練の終盤、目的地を目前にした時には、私自身が限界を迎えようとしていました。足は動かなくなり、吐き気や頭痛に襲われました。その時に周りの同期、分隊員が「あと少しだ、頑張ろう」と声をかけてくれたことを強く覚えています。それがなければ歩みを進めることが難しくなっていたかもしれません。同期の存在があと一歩、厳しい状況でも頑張る精神の支えとなっていると感じました。自分が助ける側にもなり、助けられる側にもなる。この相互関係こそが同期の絆の強さであると痛感しました。
 さらに雨の中の行進では濡れた戦闘服や装具が体力を奪っていきました。そんな状況下でも荷物を抱えて歩く同期の姿や、互いに声を掛け合う雰囲気があったからこそ最後まで歩ききることができました。自分だけの状況では持ちこたえられなかったであろう 状況でも、仲間がいることによって「自分もやり抜こう」と強く思うことができました。
 私はこの経験を通じて、同期の大切さとは単に「仲が良い」ということにとどまらず、互いに努力し、支えあい、成長を促しあう関係にあることだと理解しました。自分の努力はもちろん必要です。しかしその努力は仲間とともにあるからこそ、より大きな力となります。自分一人の力では限界がありますが同期と力を合わせればその限界を超えていくことができます。このことを、身をもって実感できたのは何よりも貴重な財産だと考えています。
 これから先、さらに厳しい訓練が待ち受けていると思います。しかし私は今回の経験を胸に刻み、常に仲間を思いやり、助け合い、ともに努力していく姿勢を忘れずに歩んでいきたいです。もちろん幹部となった後には一人で決断し、一人で責任を取らなければならない場合も必ず訪れると思います。時には孤独に耐え、部下を導き、全責任を背負わなければならない状況もあるでしょう。そのような時こそ、幹部候補生学校で培った同期の絆、共に支えあった経験・姿勢を思い出すことで、自然と周りが見え、部下の意見や支えに気づき、自分が強くなれると思います。仲間と歩んだ日々は、私が一人で立ち向かわなければならない瞬間でも必ず背中を押してくれる力になるはずです。
 最後になりますが、この寄稿文を目にしている後輩達には防衛大学校では校友会や競技会、学生者生活など様々な行事があると思います。その中で一つでも何かを頑張り突き詰める習慣をつけてほしいと思います。また、同期と積極的にかかわって時にはぶつかり合ってでも良い関係を築いてほしいと思います。学生という失敗することのできるタイミングで積極的にいろいろなことに取り組んで多くの学びを得てほしいと思います。
 皆さんと部隊で会えること楽しみにしています。

(令和7年10月)

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