同窓生は今

今人生、男盛り ~26期(陸)~(2)

2020.12.29

「防大、自衛隊に感謝!」

  福岡 龍一郎(26期 陸上)26fukuoka2.png

 小学生の頃から戦車のプラモデルに夢中だった私は、幹部校候補生学校卒業後、念願かなって東北方面隊の第9及び第6戦車大隊で小隊長として勤務することになり、憧れの仕事だっただけに、厳寒の冬季演習さえ楽しく感じられ、戦車射撃課程にも入校させていただき充実した「戦車乗りライフ」をおくっていました。
 そんな折、父の健康状態が悪化したため、後継者として会社経営の道に転身を余儀なくされ、日本のロンメルになるという夢を断念し、昭和63年春同期生がAOCに入校するその日に、後ろ髪を引かれる思いで陸上自衛隊を退職いたしました。
 その後、5年間ほど大阪の機械商社勤務を経て佐賀に帰郷し、父の死後36歳で日産自動車のディーラーを含む3社の経営を預かる身となりました。ところが、どの会社も内情は火の車。多額の借入金と赤字を抱えており、内心、父に騙されたと後悔したものの後の祭り。初めて億単位の借入金の借用書に個人保証の実印を押した時には、個人では到底返せない大きな金額に手が震えたことは忘れられません。

 丁度そのころ、経営危機に瀕した日産自動車が仏ルノー社と資本提携し、例のカルロス・ゴーンが日本にやってきました。今は犯罪者ですが、当時はまさに日産の救世主としてV字回復の立役者となります。一度だけ名刺交換をしたことがありますが、熱気が沸き立つようにエネルギッシュな人物でした。
 目標と責任の明確化、縦割り組織を超えた横の機能連携、年功序列を排した能力主義人事など、日本人が悪習や権力闘争に縛られズルズルと実行できずに終わっていた経営再建計画を、一切妥協せずズバズバと断行する実行力には目を見張りました。しかもこの改革は幹部候補生学校で教わった「戦いの原則」に則ったもので、経営も戦いも原則は同じだと痛感し、今さらながら真面目に戦術を勉強していれば良かったなと後悔しています。
 しかし、ゴーン改革は5年ほど好調でしたが、商品開発をおろそかにして生産コストを低減し、商品力ではなく安売りに頼る販売戦略は、短期的には功を奏したものの次第に業績の低迷を招き、ゴーンと日産自動車は再び転落の道をたどりご存知のような現在の状態に至ります。
 余談ですが、日産ディーラーの経営者には、私と年の近い方がかなりの数おられ、数人の方の高校の同級生が私と防大同期です。ついでに言うと、私の高校の同級生が勤務する会社の同じ部署に防大の同期が再就職で入社するなど、つくづく世の中は狭いものです。

 さて、リーマンショックや毎年のように起こる自然災害、日産自動車の不祥事にもかかわらず、3つの会社をなんとか今日まで守ることができたのは、防大や自衛隊で養った体力気力と、ほんの初級レベルながら戦術や指揮・統率に関する教育のお陰です。
 中でも「指揮の要訣」は、そのまま管理職の仕事に使えます。「人を動かす」ことに軍民の違いは無く、当社の管理職研修で私が講師を務め、実践するよう指導しています。
 また、9戦車離隊時に佐々木達士大隊長からいただいた「機甲指揮官十訓」は、私の道標となっています。経営環境の変化が激しい現代では「猪突猛進するとも遅疑逡巡する勿れ」、「創造に生甲斐あり、後塵を恥じよ。」の教えは、経営判断に迷った時、背中を押してくれます。たった5年間の戦車部隊勤務でしたが、巧緻よりも拙速を尊び、朝令暮改は当たり前、柔軟に状況の変化に対応する機甲科精神を教えていただいたことは、根が優柔不断な私にとって貴重な財産となっています。

 佐賀に帰郷したとたん、地元の防大OBの先輩方から自衛隊関連の諸団体に勧誘され、小原台情報網の威力に驚きましたが、お坊ちゃん育ちで甘ったれの私を鍛えていただいた防大、自衛隊に恩返しするつもりで活動を続けています。正直、私は中途退職したということを、少なからず引け目に感じていたのですが、一切関係なく接してくださる防大の先輩・同期・後輩には、同じ釜の飯を食った兄弟分の優しさ、有難さをしみじみ感じ、感謝するばかりです。

 さて、私の趣味は、夫婦旅行を兼ねて各地のフルマラソンの大会に出場することです。防大では柔道部、自衛隊では戦車隊、今は自動車屋と、駆け足とは縁遠い経歴ですが、45歳で初めて完走して以来、49大会、20都府県で完走することができました。コロナ騒ぎが落ち着き各地の大会が再開されたら、50回目の完走を果たすのが当面の目標です。
 最後になりましたが、我々26期は3回目の成人式を迎えたばかりの男盛りです。同期生の中には上場企業の社長や重役としてバリバリ働いている者や、パラグライダーやヨット、サーフィンなどアクティブな趣味を楽しんでいる者がおり、私もまだまだ負けるものかと奮起させられます。同期生の皆さん、人生100年時代、まだまだ元気に人生をエンジョイしようではありませんか!

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