同窓生は今

今人生、真っ盛り ~27期(陸)~(1)

2021.11.22

「人生のドットを結ぶ」

  吉田 賢一郎(27期 陸上)吉田.png

 

 防大を卒業して40年弱、突然の寄稿依頼に初めは躊躇ったものの、自らの人生を振り返るよい機会を頂いたと今はとても感謝しています。実はすっかり忘れていましたが、1学年時に「小原台だより」に寄稿したことを思い出しました。恥ずかしながら当時、国の防衛に対する考え方が、入校してたった数カ月で変わったことに自分自身でも驚いたことを綴った覚えがあります。しかし、それから自衛官として過ごした長い年月は、更に自分の人生に対する考え方(価値観や判断基準)や生き方までも変え、そして今、自衛隊を退職した自分がここにあるのだと改めて噛みしめています。

 振り返ってみると現役時代から、仕事は単に成功する事だけではなく、その意味がとても重要であり、「何のために」を常に考えることが自然と身に付いていたように思います。自分のため、家族のため、仲間のため、組織のため、社会のため、国のためにと順番に考えますが、いつのまにかそれがひっくり返って、考え方の根底の一番最初に国や社会のために如何にすべきかを考えるようなっていました。少しきれいごとのように聞こえますが、我が家の家訓を「努力・感謝そして貢献」と決め、子供たちにも幼いころからそう教えてきました。

 5年前に自衛隊勤務を終えて一般企業に再就職しました。特にこれといった希望もなく、援護マンから勧められるままに従業員数100名にも満たない中小企業の重職として入社しました。しかし経営者と事ある毎に議論して感じたことは、企業営利だけを優先するその根底にある、ものの考え方が、自分がこれまで思っていた「何のために」からは随分とかけ離れていたことです。意気揚々と再就職はしたものの、本当に自分は国や社会のために役に立っているのかと考え始めるようになりました。つまり自分の人生に対する考え方や生き方に正直でなかったことに改めて気付いたわけです。結局、その会社は2年務めて退職しました。いろいろな意味で良い勉強にはなりました。そして今度は本当に自分の気持ちに素直になって、社会に貢献できる、あるいは自衛官時代には叶わなかった国際貢献活動などにも従事したいと思いました。

 それから再々就活で出会ったのが、今いる社団法人です。元自衛官からなる内閣府の事業団のうちの一社です。ご存じない方もいるかもしれませんが、我が国は戦後70年以上経った今も、化学兵器禁止条約(CWC)に基づき、旧日本軍が中国本土に残置した化学兵器(毒ガス弾など)の処理を政府全体で取り組んでいます。平成11(1999)年には、遺棄化学兵器処理担当室が内閣府に設置され、平成12(2000)年9月黒龍江省北安市において、最初の小規模発掘・回収事業を実施しています。それ以来、これまで約20年間にわたって中国各地から約6.3万発(平成30(2018)年3月末現在)の遺棄化学兵器を発掘・回収し保管してきました。

 中国国内に遺棄された化学兵器の全体像は、北部の黒龍江省から南部の広東省までの広範囲で確認されています。特に、吉林省敦化(とんか)市ハルバ嶺(れい)には、約30~40万発にのぼる化学兵器が遺棄されているものと推定されており、現在同地区での本格的・大規模な発掘・回収、処理事業が進められていますが、全てを終了するまでにはまだ暫くかかるようです。防衛省・自衛隊も遺棄化学兵器処理担当室に、平成11年より職員を出向させて、その取り組みに参加しています。

 私が主に従事しているハルバ嶺事業は規模も大きく最もシンボリックな事業です。それは敦化市街から約40キロ離れた軍管理施設下にあり、全貌はまるで大きなプラント工場のようです。二つある発掘坑は学校プールほどの大きさがあって、全体を覆う屋内作業場が設置され、換気装置も装備された気密性・安全性が高いものになっています。この中で防護マスクを装着し、分厚い化学防護衣を身にまとい、危険な化学兵器を手で一つ一つ慎重に掘り出し、廃棄処理していくわけです。長年にわたり遺棄されていたことで表面が劣化し、毒ガスが漏れ出していることもあり、常に危険と背中合わせの作業です。まさに安全第一に、やるべきことを粛々とやれる元自衛官(陸海空幹部)だからこそできる特殊専門的な事業です。

 昨年はコロナ旋風が吹き荒れて海外事業はできませんでしたが、2021年度4月から渡航制限などはあるものの事業は少しずつ再開しています。退職してから一度は横道に逸れましたが、今は日本の代表として最前線に立って、現場作業に参加して汗をかいています。そして後世に負の遺産を残さない軍備管理の取り組みの一助となっていることを誇りに思い、また人生に対する考え方や生き方を現役時代と同じ思いから、今に繋げられたこと(人生のドットを結んだこと)に喜びと生きがいを感じています。あと何年生きられるかなぁと思うようなそんな年頃になりましたが、できれば自分の死の向こう側にまでも貫く生き方のドットを打つ、そしてそのドットにはどんな意味を持たせるかが、次の新たな課題であり楽しみにもなっています。今人生、男盛り?ではなく常に人生真っ盛り、終わりなく人生のドットを結び続けたいと思っています。終活なんかクソくらえ、まだまだこれからも我が道は続くと思うとやる気も沸いてくるというものです(笑)

★2021.6吉林省ハルバ嶺発掘・回収事業 ★日中相互協力による回収作業風景(内閣府提供)

★中国入国後の4週間隔離、PCR・抗体検査 約5回 ★事業の合間、研修で旅順 二百三高地に

 参考:内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 遺棄化学兵器処理担当室

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