防衛大学校関連

新副校長(荒井正芳 陸将)に聞く

2024.01.06

防衛大学校副校長


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陸将 荒井 正芳(34期・陸上)

将来有為な学生を育成するために



はじめに

 同窓会の皆様には平素より防衛大学校に対する各種ご支援・ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。昨年3月末に第3代副校長(自衛官)として着任しました。どうぞよろしくお願い申し上げます。寄稿の機会をいただきましたので、コロナ禍明けの防大の現状のご報告と将来有為な学生育成のための取組みの一端につき紹介したいと思います。

コロナ禍明けの防大の現状

 昨年5月の新型コロナ感染症に係る各種制約の解除以降、ここ防大においても徐々にコロナ禍前のような学科・訓練、学生舎生活及び校友会活動を取り戻してきました。在校生(当時:68~71期)の2学年以上は本校入校以来、1学年は入校前の高校時代にコロナ禍の影響をもろに受けています。そのような学生たちですが、ある学生の弁を借りると「何か目の前の霧が晴れたよう」に感じているのか、5月以降は校内には明るさと活気に溢れ、失われた時間を取り戻すかのごとく躍動しているように見えます。主要行事の夏季(全学年)及び秋季(1学年)定期訓練はじめ、9月の水泳競技会、11月の第71回開校記念祭も約3~4年ぶりに各種制約なしで実施することができました。他方、約3年超に及ぶコロナ禍の制約の影響は小さくなく、職員側の校務運営や学生の諸活動については一部手探りで進めている面があることも事実です。

将来有為な学生を育成するために

 防大の発展や将来有為な人材となるべき学生の育成は、さまざまな側面から考えなければなりません。その基軸は、防大創設の目的(将来幹部自衛官となるべき者の教育訓練)、教育訓練の方針(広い視野、科学的思考力、豊かな人間性の養成・涵養)に基づくこと及び建学の精神・学生綱領などの伝統の革新にあることは当然であり、大前提となります。
 ここでは、これらに加えて、着任後に感じている学生の気質、主に良いと思われる気質に着目し、留意している施策や今後の方向性について述べたいと思います。
 まず学生の対外志向性です。現在コロナ禍が明け、防大においても国際交流がより一層活発化しています。次の数字は年度により若干の振れ幅はありますが、研究科学生を含め10カ国約100名前後の外国人留学生を常続的に受入れている一方、本科学生は約50から60名が海外の士官学校や国際会議に派遣されています。私が在校していた約30年前と比較しても大幅な数的増大であり、学生にとって国際化は身近で自然なものになっています。国内の交流では、一般大学でいう就職活動と連動したインターンシップ活動、防大ではその趣旨では活動できませんので、対外的な視野を広げるという観点からの活動を校外研修として昨年度から実施しています。JICA研修派遣(国内本部及び海外事務所)と地域の部外公的機関での社会活動支援への派遣の試みです。これら国外・国内の交流施策の展開と拡充は、学校として施策化する部分もありますが、海外派遣や学外研修の機会に高い関心を示し、強く要望する学生が多いことにもよります。派遣された学生の所見を見聞きすると、国内外を問わず派遣前と派遣後では明らかに成長の跡が見て取れます。海外派遣では派遣先の魅力を感じるのは当然のことですが、翻って我が国の社会的・文化的な魅力、自国の安全保障・国防の重要性、防大の良さなどをあらためて強く感じて帰って来ます。また、国内研修においても地域社会に支えられていることや、異なる職場で働く人々の考えや思いに触れ、あらためて自らを見直す機会を得て帰って来ます。我々の世代以上に今の学生が持つ対外的な関心から、自らの視野を広げるための施策を充実させることは、将来にわたり激動の国際社会を生き抜く幹部自衛官・リーダーとしての素地を培うのに有益であり、今後とも量的・質的な拡充を進めていきたいと思います。このため、防大の担当部署の組織・機構の見直しを図る必要がありますし、同窓会の皆様のご助言・ご支援なども賜れば幸いです。

 次に学生のキャリア意識の高さという気質です。自分が進む、選択する職業・組織は自らの人生を賭けるにふさわしいか否かということへの関心は極めて高いと感じます。これらは一般社会の若者・大学生などに共通的にもいわれており、同世代の防大生も同じメンタリティーであるとは思います。他方、防大では一般社会・大学のように数ある職業・進路選択の際の比較論としてのキャリア教育・支援ではなく、安全保障・国防の重要性などを理解させた上で、幹部自衛官として進ませるためのキャリア教育・支援を実施しなければなりません。このため、防大の三本柱教育(学科・訓練、学生舎生活、校友会活動)を通じ、幹部自衛官である指導教官や学科教官などによるきめ細やかな教育が極めて重要になります。特に定期訓練以外の通常の訓練(主に週2時間)や防衛学教育の中でのキャリア教育の充実、学生舎生活における臨機の機会教育、学生教育のために来校する幹部自衛官に経歴・勤務体験談を含めて貰うことなどに留意しています。防大職員の努力は当然ですが、定期訓練の部隊実習、あるいは校友会活動などで学生と接する同窓会の皆様にも今まで以上に、自衛官勤務のご経験談・やりがいを含め、学生へのご助言・激励をいただければ、より多層的・複合的な観点から学生のキャリア意識の高揚、ひいては強固な任官意欲の向上に資すると思われますのでご理解・ご助力賜れば幸いです。

おわりに

 以上、着任後に感じた学生の良い気質に着目した学生育成の取組みの一端について紹介しました。当然、学生教育には他のさまざまな取組みもありますし、学生気質については、ここに挙げた以外の部分の影響・課題とその対応などにも十分注意しなければなりません。

 いずれにしましても、防大の発展や学生教育については、コロナ禍明けのここ2年から3年が、伝統を守りつつ時代の要請に適応した取組みの道筋を付ける勝負の時期と考えております。我が国の国防を担う幹部自衛官となるべき者の育成について精一杯の努力と情報発信などに努めて参りますので、引き続きご指導・ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。                                   

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