同窓生は今

67期生に聞く ~空自一般幹部候補生~

2023.10.30

「防衛大学校と航空自衛隊幹部候補生学校の違い」

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航空自衛隊幹部候補生学校 学生隊

  一般幹部候補生 空曹長 八尋 翼

1 はじめに
 はじめまして。私は今年度4月から奈良県に所在する航空自衛隊幹部候補生学校(以下「空幹候校」という。)に入校している八尋候補生(防大67期)です。空幹候校は、航空自衛隊の幹部自衛官となる者を育成する機関であり、「自ら考え判断し行動する航空自衛隊幹部」を教育理念とし、日々の教育訓練が行われています。 現在、私が本校に入校してから早や4ヵ月が経過しました。当初は防衛大学校との違いから戸惑うことも少なくありませんでしたが、今では空幹候校での生活にも慣れ、充実した日々を過ごしています。一方で、空幹候校での生活に慣れた現在においても、防衛大学校と空幹候校の違いを感じることは多くあります。そこで、今回はこの2校の違いについて紹介したいと思います。

2 防衛大学校と空幹候校の違い
 まず1つ目の違いについては、共に生活する同期の多様性です。防衛大学校は、入校に際して年齢制限があり、共に入校し、そして卒業した同期は自分と同じように、つい最近、高校を卒業した人が殆どでした。 一方で、空幹候校はこれとは大きく異なります。まず、私のように防衛大学校を卒業した後に空幹候校に入校した学生は、一般大学から入校した学生と合わせて、BU(防大及び一般)課程学生と呼称されます。しかし、学生舎において寝食を共にする同期はこれだけではありません。例えば、数年間、部隊で空曹として勤務した後に入校するI(部内)課程学生、防衛医科大学校等で医学を学んだ後に入校するMDN(医科歯科看護科)課程学生、航空学生としてウィングマークを取得した後に入校するA(飛行)課程学生及び准尉又は曹長から選抜されて任官するS(3尉候補者)課程学生など、様々な課程学生と共に生活していくこととなります。 そして、このように出身ソースや年齢などが異なる同期との生活では、様々な知見を深めることができます。例えば、I課程学生からは、彼らが今まで空曹として初級幹部と関わってきた中で、どのような初級幹部が必要とされているかを知ることができ、同じBU課程学生の中でも一般大学を卒業して入校した学生からは、自衛隊の枠に囚われない柔軟な考え方に触れることができました。これらの経験というものは、決して防衛大学校の同期からは得られないものであり、空幹候校の有意義な点の一つであると思います。

3 防衛大学校と空幹候校の違い
 続いて2つ目は、2校の教育目的の違いです。まず防衛大学校の教育目的は、将来自衛隊の幹部自衛官として必要な識見及び能力並びに伸展性のある資質を与えることにあります。一方で、空幹候校は、はじめに述べたとおり、自ら考え判断し行動する航空自衛隊幹部を育成することを目的としています。 そして、この違いは日々の教育訓練に色濃く表れています。例えば、防衛大学校での訓練では教官から教わったことを正確に覚えることが要求されます。一方で空幹候校では、教育目的を達成するため、より高度なレベルが要求されます。例えば、大規模な訓練では、訓練想定に応じた部隊の活動計画を学生自らが考え、その計画に基づき実行に移すことが要求されます。また、訓練の途中で様々な状況が付与され、自ら考え判断し行動することも求められます。 この他にも、空幹候校では、幹部自衛官としての立ち居振る舞いを身に付けることを主眼として、毎日朝礼が行われますが、これを企画し実行するまで、すべてを学生が自ら考えて行っています。時期的特性等を踏まえ、どのような朝礼が学生の資質の向上に繋がるのかを考え、実施要領を作成し、実行段階においては監督指導を行う。このような活動が、空幹候校では毎日行われています。

4 おわりに
 これまで防衛大学校と空幹候校の違いについて説明してきましたが、もちろん両校は似ている点も多くあります。例えば、防衛大学校では大隊対抗で棒倒しをはじめとする様々な競技会が行われますが、空幹候校でも中隊又は区隊対抗で格技、球技、駅伝及び断郊等の競技会が行われています。さすがに規模は防衛大学校の方が大きいですが、競技会に臨む学生の熱量は空幹候校も負けず劣らずです。また、課業後や休日の過ごし方もほぼ同じです。防衛大学校で課業終了後に校友会で身体を動かすように、空幹候校でも課業終了後はサッカーやランニング等で身体を動かしますし、休日は同期と遊びに出かけます。 しかしながら、本質的に異なる部分があることも事実です。そしてこの違いとは、同期の多様さ、そしてより高いレベルを求める空幹候校の教育にあると言えます。この防衛大学校と空幹候校の違いについてよく理解した上で、残りの課程生活に全力で臨み、「自ら考え判断し行動できる幹部自衛官」となれるよう頑張っていこうと思います。

★基地祭の観閲行進においてBU及びI課程混合部隊の指揮を執る様子(筆者:写真右)

(2023.10)

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