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小原台事務局 > 防衛大学校関連

新幹事に聞く

2020.02.04

世界一の士官候補生学校を目指して-当面の課題

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防衛大学校幹事

陸将  原田 智総 
    (31期・陸上)

 昨年12月20日付で幹事を拝命し、防衛大学校卒業以来、33年振りに小原台の地に立ちました。学校本部を始めとする新しい施設や多様な学群編成など新しい防大を感じつつ、規律正しい生活や校友会・勉学に励む学生の姿に、私の在学時と変わることのない防大の伝統を実感しています。また、幹部任官以来、部隊・幕僚組織に身を置いてきましたので、学校運営や学生育成に係る業務の進め方に戸惑うこともありますが、國分良成学校長が掲げられている「世界一の士官候補生学校」を目指し、微力ながら努力する所存ですので、諸先輩方のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。
 さて防大の近況については、昨年の小原台だより Vol.26(2019.07.11)にて納富前幹事が寄稿されていますので、今回は「世界一の士官候補生学校」を目指す上での課題について、私なりの考えをご紹介いたします。現在、創立100周年に向けて、防大の未来構想を練る「更なる高みプロジェクト」が学内で進行中です。内容的には長期的な視点で非常に幅広く、多様な方策が議論されていますので、本稿では当面解決していかねばならない課題に焦点を当てたいと思います。

 「環境は人を作る」と言われています。槇初代学校長が「僧房、修道院が好んで山頂や山中に(中略)建立されるのと軌を一にする」と表現されていますが、小原台が防大の設置場所として選定されたのも、「学生の修業に専念するに最良の地」であったからに他なりません。そのような観点から「世界一の士官候補生学校」として具備すべき要件の一つ目は「一等の環境」を整えることだと考えています。現在の防大の環境を見るに、確かに多くの施設は新しくなっていますが、建物総数153棟中、約6割の90棟が平成元年以前に建築されたものです。研究棟については本年度に旧理工学館2棟を合棟した新理工学館1棟の建替が終了し、令和11年度までに全ての理工学館・防衛学館の建替が計画されています。学生舎は平成16年に第3大隊、18年に第4大隊、21年に第2大隊、24年に第1大隊の建替が終了しました。外見上は美しく見えますが、第3大隊学生舎は15年が経過し、小原台の気候の厳しさもあり、各所にシビアな不具合が生じています。学生舎内の備品も老朽化が進んでおり、中には使用に耐えないものも散見されます。また、学生舎1棟は本科学生460名(4棟で1840名)を基本として設計されていますが、予算定員の増加(460名から480名)や留学生の受け入れ(本科93名)などにより現収容人員数は1929名であり、収容能力を100名程度オーバーしています。加えて本科学生中239名の女子学生は、男子学生と同一フロアで起居しています。この現状は将来の国防を担う士官候補生を育成するに十分な環境を提供できているとは言えず、昨年9月に河野防衛大臣にもご確認頂いております。令和2年度には学生舎改修、備品更新のための予算が計上されていますが、第5大隊の復活による収容能力の拡充を含め、学生に「一等の環境」を整えるため不断の努力の必要性を痛感しています。

 二つ目は、防大の本務である「一等の教育訓練」を提供することです。現在の防大は人文・社会学3個学科、理工学11個学科から構成されています。加えて平成24年度から人社系・理工系をまたがる形で、所属学科以外の他の領域も効果的に学ばせ、幅広い視点からの総合的な問題解決能力を身に付けさせることを目的として、「危機管理」「安全科学」「生命科学」「国際交流」の4プログラムが設定されており、非常に充実した教育課程となっています。しかしこれらは「小原台の中」でのことであり、将来の幹部自衛官として広い見識やより高度の知識を得るためには、外に出て学ぶことも重要です。教官の推薦や本人の意志に基づいて、他大学や研究機関における受講が可能なプログラムの設定、そのための学生に対する時間的余裕の付与や他大学等と相互に学生を派遣できるよう連携を図る必要があります。特に他大学等との連携にあたっては、防大教育に関する部外への情報発信が不可欠であり、文部科学省が厳正な審査を経て採択する科学研究費助成事業(競争的研究資金の獲得)への更なる参画や、防衛研究所、防衛装備庁及び各自衛隊研究機関との共同等による安全保障政策提言や装備開発研究が必要です。これらの施策を通じて、学生に提供する教育レベルが向上するとともに、副次的に防大を目指す学生や教職員・研究者に防大の魅力を訴えることができるものと思います。

 また国際化への対応も必要です。防大では9カ国93名(本科入校前の日本語研修生を加えれば10カ国119名)の本科留学生及び9カ国から38名の短期研修を受け入れています。防大からも13カ国の士官候補生学校に57名の学生を長期・短期派遣しています。加えて国際士官候補生会議(約20カ国30名を招聘)、インド・パシフィックウイーク(3カ国22名を招聘)の多国間交流プログラムを実施しており、学生に国際化の素地を付与するとともに、将来につながる安全保障上の相互理解と信頼醸成に寄与しています。このような取り組みは今後も継続・拡大するものと予想される一方で、最近の本科学生のTOEIC平均は500点前後、400点未満が約480名存在しており、語学力の修得は道半ばです。引き続き国内における在日米軍を含めた各国・多国間の交流プログラムを通じて学生のインセンティブを高め、語学教育努力を継続することが重要です。

 教務に加えて学生には4年間で約1000時間の訓練が課されており、基本的な各自衛隊の戦闘戦技訓練や部隊研修が行われています。自衛隊においては装備の高度化、任務の多様化が進んでいる一方で、防大で行われているこれらの訓練は、過去のものからほとんど変化していないのが実情です。学生の任官辞退理由の一つに部隊における勤務への不安や理解不十分があることからも、部隊における実習・研修をインターンとして活用し、部隊活動の実情や高度かつバラエティーに富む業務内容への理解促進を図るとともに、機会を捉えて災害派遣などの実部隊運用を体験させることが必要と考えています。
防大における教育訓練には校友会活動による心身の練磨、学生舎生活を通じた自主自律の精神や規律心、リーダーシップとフォロワーシップの涵養なども含まれます。校友会に関しては平日の活動の公務化は認められたものの、休日の活動、部外大会参加などは未だに認められておらず、学生が憂いなく活動できる制度を整える必要があります。また学生舎生活においても、コンプライアンスの観点から指導官の関与が増加しつつあります。確かに学生を管理することも必要ですが、彼ら・彼女らが自ら考えて学生隊を運営する余地を増やすことが、学生舎生活の目的を達成する上で重要です。

 これらの課題は数週間の防大勤務で私が感じたことですので、これからも多くのチャレンジがあると思います。将来の我が国防衛を担う世界一の幹部候補生を育成すべく、執念をもって職務に取り組む所存です。諸先輩方には校友会行事や開校祭などの機会を捉えて防大の現状を見て頂き、また学生達を激励下されば幸甚です。

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