防衛大学校関連

新幹事に聞く

2019.03.19

「防衛大学校の現状と課題」notomi.jpg
  
  防衛大学校幹事 陸将 納冨 中
  (29期・陸上)

 昨年8月1日付けで第50代幹事を拝命しました、第29期生の納冨です。防衛大学校はおろか、陸上自衛隊においても教育機関での勤務はなく、自分にとって全く初めての分野となりますが、母校で、次代の日本の安全保障を担う将来の幹部自衛官を育成する重要性を深く認識し、微力ながら努力していく所存ですので、宜しくお願い致します。
 さて、小原台に至る急坂を登りきれば目に飛び込んでくる真っ白な壁と正門、本館に通ずる道路の左右に広がる青々とした芝生、さらに建て直されたとはいえ本館とその後ろに聳える時計台と、部隊ではあまり感じることのできない上品で開放感溢れる雰囲気は、多くの卒業生に在校当時から変わらぬ防衛大学校を感じさせますが、半年の勤務を通じ、確かに変わらない点もある一方で、色々な面で変化していることを実感させられました。
 本科学生数は約2,000名と変わっていませんが、自分の在校当時との大きな違いは、女子学生の存在と留学生の増加です。女子学生は現在228名(留学生含まず)が在籍し、全学生の約12パーセントを占めています。現在の2学年である第65期生からは、以前より15名多い60名を募集していますので、今後2年間、女子学生数はさらに15名ずつ増えていくことが見込まれます。既に26年の歴史を有する女子学生ですが、各自衛隊で活躍する優秀なOGから受ける印象通り、男子学生に引けを取らず日々努力している姿には頼もしさを感じます。学生舎では男子学生と同じフロアーの一角に起居しており、初度視察の際には防犯カメラを除けば特段のセキュリティ・システムも無いことに戸惑いを覚えましたが、裏返せば厳正な規律が維持されている証拠であり、将来幹部自衛官を目指す者にとっては当然のこととはいえ、学生の志の高さに感心した次第です。
 また、留学生の増加にも驚かされました。現在、本科には11ヵ国から97名、理工学研究科には3ヵ国から17名の留学生が在籍しています。これに加え、本科入学前の日本語課程を履修する通称「ゼロ学年」が存在し、彼らも学生舎で生活することから、本科留学生は防衛大学校に5年間どっぷり浸かることとなります。因みに、現在留学生を最も多く派遣しているのがベトナムで、本科23名(ゼロ学年を含む)に加え、研究科13名の計36名が在籍しています。また、ベトナムに加え、ミャンマーやラオスといった、同盟国アメリカが関係構築に気を遣う国からも留学生を受け入れているとともに、留学生派遣の歴史が最も古いタイでは、海軍参謀総長と空軍司令官を輩出する等、わが国のインド・太平洋戦略にも大きく貢献しています。加えて、短期、長期合わせ、8ヵ国から51名の士官候補生等を受け入れる一方で、防衛大学校からは92名の学生を14ヵ国に派遣しています(平成30年度実績)。また、外国語教育にも力を入れており、文系、理系を問わず取得すべき語学の単位数が増えるとともに、最近ではアラビア語やポルトガル語も教育されています。さらに、全学生が受験するTOEICも、昨年9月に行われた試験の平均点は500点を超える等、国際感覚の伸長には著しいものがあります。
 防衛大学校の重要な柱の一つである学生舎生活に関しては、2学年から所属大隊が変わらないシステムや各種競技会を通じ、各大隊のまとまりや団結といった点では昔と変わらない、或いは昔よりも進歩していると言えるかもしれません。特に、カッター、断郊、棒倒しといった伝統的な競技会に加え、先ほど触れたTOEICの成績や書評を競うビブリオバトル、隊歌等11の競技会の成績に基づき年間最優秀大隊を表彰する制度があり、学生が学生舎生活の持つ意義をより身近に感じられるようになっています。一方で、家庭環境の変化をはじめ、高校卒業時までの縦社会での経験の希薄化や、コンプライアンスの厳格化等の中で、「学生間指導のあり方」については、あるべき姿を模索する状態が続いているのが現状です。既に、概念についてはきちんと整理されているにもかかわらず、学生の中には、その本質よりも表層的な面に捉われ、本来あるべき指導ができない、或いは指導を忌避するといった傾向も看取されることから、再度趣旨の徹底を図る一方で、自主自律の原点に立ち返り、長期勤務学生や綱領委員長を中心に、学生自身に考えさせることにより、主体性や参画意識を引き出していくことが大きな課題と認識しています。
 校友会活動については、成績だけに着目すれば、16年ぶりの箱根駅伝出走をはじめ少数の例外を除けば厳しい状況が続いています。一方で、学生の気持ちの中での校友会の重要性、或いは学生の成長過程に果たす校友会の重要性については些かも変化はなく、学生は全力で校友会活動に取り組んでいます。國分学校長は、「自己紹介は、校友会よりも専攻が先ではないか?」と苦笑いされますが、まさに学生の偽らざる本心を良く表している一例です。また、校友会を通じ、退官された方を含む幅広い年代のOBとの絆を築けるようになっていることは、学生の大きな財産となっています。是非、所属された校友会の後輩を温かく見守っていただければ幸いです。
 なお、ご承知の通り、若年人口減少の中、各大学は生き残りをかけて熾烈な戦いを繰り広げており、防衛大学校は他大学とは性格を異にするとはいえ、優秀な学生を獲得するための努力が今まで以上に重要となってきています。平成30年度の入学試験では、総受験者数は約2,000名も減少してしまいました。二次試験受験者が昨年よりも多かったため一安心したことは事実ですが、この傾向は今後も長く続くことが予想されます。同窓会の皆様には、優秀な学生獲得のためのご協力もいただきたく、宜しくお願い致します。
 最後になりますが、幹事に着任し、学校及び学生が、同窓会からかくも多大なご支援をいただいていることについて認識を新たにしました。学校勤務者の一人として、同窓会に心より感謝致しますとともに、引き続き宜しくご指導のほどお願い致します。

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