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防衛大学校関連

30年度新春國分学校長に聞く

2018.02.13

  「新たな高み」の次へkoutyou2018.2.7.jpg

   防衛大学校長 國分良成

 過去4~5年にわたって展開してきた「新たな高み」プロジェクトについては、これまでもこの誌面をお借りしてしばしば紹介させていただいた。このプロジェクトは様々な改革事業を含んでいたが順調に推移し、その多くが実施に移され、大枠としての完成も近づいている。そうした進展の中で、防大では「新たな高み」の次なる段階への模索が始まっている。改革の志を失えば、そこに進歩はない。絶えず現状をチェックし、再検討し、良い点は伸ばし、悪い点は改良する。組織が守ることだけ考えていたら、そこに未来はない。

 まずは、その後の「新たな高み」について簡単に紹介させていただきたい。防大においてこれまで十分に重視されてこなかった研究部門を充実させるために設立されたグローバル・セキュリティ・センターは、約1.5億という潤沢な国家予算を得て順調にスタートし、平成30年度の2年目もほぼ同規模の予算を得て、内外の研究者を交えた10個の斬新な共同研究プロジェクトも軌道に乗っている。
 防大の国際力強化のために設立された国際交流センターも、学生の海外派遣、留学生の受け入れ、国際士官候補生会議(ICC)の開催、海外要人の来校準備、防大首脳の海外訪問等の業務で忙しい日々が続いている。学生の知的素養強化のために設立された教養教育センターも、英語教育(TOEIC)、学外講師による課外講演、リテラシー教育等の面で大きな成果を上げている。
 「新たな高み」のもとで実施された「新学生間指導」も、学生たちの「自主自律」を基本に順調に進展し、かつてに比べ悪質な事案が減り、懲戒事案も数年前に比べ約半減し、学生たちも伸び伸びと日常生活を送っている。さらに、卒業生の高齢化を勘案して、草創期の卒業生を中心に防大史の保存作業としてオーラルヒストリー(聞き取り調査)を実施している。
 このような「新たな高み」プロジェクトの一つの到達点として、研究・教育のより高度化と機能化を目指して、研究科の機能を加えて、平成30年度から先端学術推進機構が新設される。今後、私自身も新機構に直接間接に関わることで、防大の研究・教育面の発信力をさらに強化させたいと考えている。
 こうした組織改編にともなって、平成30年度から各研究科「主事」の名称も、意味をより明確化させるために「研究科長」に変更する。また来年度以降の検討課題であるが、「防大幹事」の呼称を、「企画・管理担当副校長」、「教育・研究担当副校長」と横並びに、「訓練・訓育担当副校長」に変更したいと考えている。歴代幹事や草創期の卒業生の方々にご意見を広くお聞きしているが、これまでのところ、この変更に反対の立場を表明された方は一人もおられない。
 
 「新たな高み」が終盤に近付くにつれ、防大執行部では、「世界一の士官学校」を目指すためのより時間軸を伸ばした中長期計画が必要ではないかとの点で意見の一致をみており、すでにその初期的検討も始まっている。これは従来の単年度の業務計画に加え、今後のわが国経済や少子高齢化などの客観状況も踏まえ、施設や人員の構成なども含めてより中長期のビジョンと計画が必要であるとの共有認識の中から発議されたものである。そうした一連の動きの中で、教職員に提示した私なりの視点の大枠を以下に紹介したい。
 第1に、今後とも自衛隊の中心幹部を輩出し続ける使命の重要性である。戦後、防大は自衛隊の中心幹部を供給し続けており、今後ともそれが期待される。もちろん一般大学の卒業生も不可欠だが、防大卒業生の重要性は明らかであり、今後とも優秀な中堅・最高幹部を輩出し続けなければならない。アメリカにはもちろん立派な士官学校が多く存在するが、米軍トップにはROTC組もかなり多く、必ずしもそうした士官学校卒ではない。
 第2に、陸・海・空の統合の原点としての防大の重要性である。世界はまさに統合時代に入っているが、わが国でも「統合機動防衛力」の重要性が指摘される。世界の士官学校はその多くが陸・海・空に分かれているが、防大は戦前の反省から一つとなった。この歴史的恩恵は自衛隊の発展にとってかけがいのないものであった。防大で寝食をともにした仲間がいったんは陸・海・空に分かれるが、統合機能の強化にともなって防大時代の人間関係のネットワークが駆使されてきた。今後とも、将来の統合機能強化に配慮した様々な工夫が防大教育に必要であろう。
 第3に、今後とも優秀な幹部自衛官を輩出するために、知的に武装された人材を育成することに重点を置かねばならない。先進諸国の軍人たちの多くが修士号はいうまでもなく、博士号を取得している。日本ではまだまだそうした面での制度が弱い。その点で、防大でも研究科(大学院)の充実が一層図られるべきである。修士を1年で修了するケースが増えてきているが、こうした試みは大事である。また本科においても、今後とも文理融合型の授業を増やすべきであり、宇宙やサイバーなどの新領域に配慮した科目編成も重要である。
 第4に、グローバル思考の展開である。「世界一」を目指す以上、グローバル思考でなければ意味はない。過去、防大は多くの長期留学生を輩出し、現在も輩出し続けている。卒業した彼らは本国で高い評価を受けている。学生全体に占める留学生比率は、全国の大学の中でもトップクラスである。また、防大生を多く海外に派遣しなければならない。短期間でも派遣された学生は帰国後に大きな飛躍を見せている。今後の自衛官にとって、英語はもちろんのこと、若い時に広い世界を知ることは一生の財産となる。グローバル思考という点で、女性の活用も重要である。女性自衛官の意義について、防大時代から男子学生も含めてセンスを共有しておく必要があろう。
 第5に、日本的美徳の涵養である。防大では自由と規律のバランスを説いているが、それは西洋流の自由・規律観と日本的精神風土との融合でもある。集団生活の重視と他者への配慮と謙譲の美徳、団体行動と秩序維持の尊重、卒業後も続く先輩・後輩と同期の絆、日常生活における清潔感と公衆マナー等、これらは日本的美徳でもあり、昨今では世界からも高い評価を受けている。今後とも、先進的価値と日本的価値の融合に配慮した教育体系が必要である。

 以上において指摘した点は、もちろん今後の試行錯誤の過程で可変的なものであり、絶対的なものではない。しかもこれは大枠であり、今後求められるのは、こうしたことに基づいた具体的な構想と施策であり、施設や設備、学生・職員の人員構成なども含めて活発な議論が必要である。夢は「防大モデル」の確立と発信である。

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