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同窓生は今

今人生、男盛り(22期ーその2)

2017.01.24

東京都危機管理監を体験して
  第22期生 宮嵜 泰樹29otokozakari-M.jpg

 4年前、陸上自衛隊を退官して、東京都危機管理監という東京都の現職の業務を3年間近く実施しました。この間にこれまでの自衛官の職務とはかなり異なった体験をしましたので、皆さんにその一端を紹介します。
 任期中には、石原知事、猪瀬知事、舛添知事の3人の知事に仕えました。3人の知事は皆さんよくご存知のようにそれぞれ個性の強い知事ではありましたが、3人とも危機管理という分野においては、業務全般を任せていただきました。
 私に最も期待された業務は、「首都直下地震対応」でした。現役最後の大仕事が、東日本大震災の災害派遣でしたので、その時のさまざまな経験や教訓を「首都直下地震対応」に盛り込もうと思いましたが、初めはなかなかうまく進みませんでした。
 私が来る前までは、東京都では自衛隊の災害派遣が15年間なかったそうですが、私の任期中には、「伊豆大島土砂災害」「三宅島山林火災」「奥多摩地区雪害」「奥多摩地区山林火災」の4件の自衛隊災害派遣があり、特に多数の犠牲者が出た「伊豆大島土砂災害」対処は、東京都に大きな衝撃を与え、これ以降都庁の災害オペレーションへの取り組む姿勢が変化し、具体的な首都直下地震対応が進み始めました。
その中で、特に印象に残ったのは次の3点でした。
  1 被害想定に基づく防災計画の作成
  2 都と国と区市町村の連携の難しさ
  3 都と自衛隊、警察、消防との調整

 先ずは「被害想定に基づく防災計画の作成」についてでありますが、我々自衛官にとっては、被害想定を基準に防災計画を作ることは自明の理ではありますが、都庁のような役所ではそのような感覚は乏しく、そもそも地図を広げて災害計画を作成する習慣がありませんでした。知事に対し地図を広げ、被害想定を展開して、その後に対応を説明すると、その説明要領に一同が驚いたことに驚きました。作戦(オペレーション)を実施する上で、地図を活用し、地形と被害と対処要領を一体的に考察することは自衛官にとっては当たり前のことですが、都庁では欠如している感覚でした。このようにして都庁の皆さんと地図や被害想定を駆使して防災計画を詰めることができたことは、重要な一歩であったと思います。
 次いで、「都と国と区市町村との連携の難しさ」ですが、防災対処の一般手順は、先ず区市町村が対応、次いで都道府県が支援、最後に国が支援するという法体系で動きます。伊豆大島土砂災害では、発災当初大島町は茫然自失状態、国は早い段階から内閣府が調査団を大島に派遣して介入開始、このような中で町と都と国の3者が緊密な連携を実施して災害対処する難しさを肌で体験しました。この時の経験から、首都直下地震対応は、計画の段階から先ず都と国がしっかりと連携する必要があるとの認識を持ち、国に対して都のオペレーション計画を説明し、国の計画とすり合わせ、互いの連携要領を話し合い、互いのパイプを徐々に太くしていきました。その結果、首都直下地震発災時には、国の指揮所を都庁内に設置し、情報共有要領や各種マニュアルを共に整備し、これを検証する訓練の機会も設け、具体的な連携が進みました。他方、区市町村との連携強化も国と同様にさまざまな機会を活用して進めましたが、その数は特別区だけでも23単位あり、これに市町村を加えるとかなりの数になります。また、それぞれの地域の特徴が異なり、首長の考え方も千差万別であるので、改めて区市町村と連携する難しさを痛感しました。
 最後は、「都と自衛隊、警察、消防との調整」ですが、大島町災害時に実際に生起した事項ですが、基本的には大島町や東京都が現場において自衛隊、警察、消防の役割、活動範囲、支援協力等を調整しなければなりませんが、それは一般の行政職員にはかなりハードルが高い事項であり、実際には3者が現場で話し合って行動していました。以後、都庁の職員の皆さんに調整要領を教育しましたが、これは簡単なことではありませんでした。自衛隊では、各種組織等との調整は当たり前ですが、実はこれは大変なノウハウであり、また混乱した現場でこの種の調整を済々と実施できる自衛官の能力は、日々の訓練の積み重ねの賜物であり、防災やその他の危機管理の場において自衛官が最も力を発揮できる分野の1つであるということに改めて気づきました。
 以上の3点は私の3年間の経験から特に感じたものですが、基本的に自衛隊時代に身につけた「情報」「作戦」「兵站」の各種能力は、防災等ですべて活用できるものでありました。   
現在全国各地で、現役の自衛官の皆さんや自衛隊OBの皆さんが防災関係で活躍されており、本当に心強い限りでありますが、これまで自衛隊で身につけられた各種のノウハウ、知識、技術等は、役所等にとってはすべてが宝物ですので、どうか存分に皆さんの力を発揮され、引き続き地域や地域住民のための貢献を宜しくお願い申し上げます。

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