武蔵が五輪書の執筆を終え、自らの死の直前に残した21ヶ条からなる人生の心情を記した「独行道」の最後に見られる「常に兵法の道を離れず」という言葉こそ、兵法者として生きた武蔵の生涯を収斂した言葉になったのであります。
武人としての「兵法の道」、すなわち武蔵の悟道の基礎をなしていたものは武蔵が生涯を通じて持っていた「腹(丹田)の意識」であり、その「呼吸」とともに身体動作のみならず、武蔵の精神構造の奥深いところまで影響していたものと考察致します。
そして、そのような激動の時代に武蔵が生涯持ち続けた武士としての誇りと、たゆまぬ兵法修行により到達した武蔵の高潔な精神的境涯というものは、混沌とした現代に生きる我々日本人にも相通ずるものがあると思うのです。 |