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はじめに、日本の企業は皆さんもご承知のように、敗戦の荒廃の中から欧米に追いつき追い越せを目標に、官民一体となって努力した結果、高度経済成長の時代を迎え、やがてそれも通過して80年代後半には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と喧伝されるまでの経済大国に登りつめました。しかしそれもバブルの結果であることが露呈されるに及んで、末曽有の不況を経験する結末となり、つい最近まで「失われた10年」という言葉に代表される長い停滞のトンネルの中を歩んできたのです。それが直近ではバブルの清算がほぼ完了したことや、政府日銀による長期に及ぶ低金利政策、そして中国をはじめとするアジア諸国の発展に伴う特需によって、ようやく回復の兆しが各方面に現れてきているというのが現状ではないでしょうか。
この間企業の目標は「業界ナンバーワンを目指して、売上、利益の最大化を図ること」にあったと言っても過言ではないでしょう。現在においても当然この目標が変わることはありません。私企業である以上、売上、利益を追及し、その結果として雇用を拡大し、税金を支払うことによって地域、国に貢献することは、企業にとっての美徳とも言えることであります。ただ従来と異にするところは、その目標を達成するための企業の諸活動が「厳正な規律」に基づいて行わなければならないという観点であります。そのことを端的に表しているのが、最近よく目や耳にする横文字やカタカナで表現される言葉です。例を挙げれば、コーポレートガバナンスであり、アカウンタビリティ、ディスクロージャー、リスクマネジメントなどであります。
時代の要請とも言うべきこの背景には大きく2つがあると私は考えています。1つは経済のグローバル化であり、もう1つは企業の社会的存在の増大化であります。
まずグローバル化ということで言えば、米国に次ぐ世界No.2の経済大国である日本が、国内だけに通じる日本独自のルールだけで企業活動をすることが許されなくなったということにあります。グローバルで通用するルール。これはとりも直さず欧米、特に米国のルールであり、その最たるものが「企業は株主のものである」という価値観に基づく株主重視の経営であります。このことから最近厳しく企業に求められているのが次の事柄であります。すなわち、すべての株主に対して迅速、かつ平等に企業情報を公表すること(ディスクロージャー)であり、経営陣の下す意思決定が適正なルールに基づいて行われる、と共に社内の諸活動が社内規則に従って正しく行われることを周知徹底させること(コーポレートガバナンス)、企業業績の粉飾(ウィンドウドレッシング)や情報の不適切な利用(インサイダートレーディング)に対し厳罰でのぞむこと、などであります。企業経営者は従来利益優先の立場から、とかくこれらを軽視しがちであったわけですが、この姿勢を改め、社内の統制を強化し、公明正大な経営を行うことが強く求められているのです。
一方の社会的存在としての企業の側面で言いますと、世界中が市場経済体制(資本主義化)に移行する中で、企業の課す役割と責任は益々増大化しています。これも最近よく使われる言葉としてCSR(コーポレート・ソーシャル・リスポンシビィリティー= 企業の社会的責任)があります。各企業が社会的公器として以下のような責任を果たして行くことが求められているのです。それは、ますます深刻化する環境問題への対応であり、人種・国籍・性別等によらない雇用の促進、法令や倫理の遵守、談合など不公正な競争の排除、顧客の情報資産の保護等であります。
この責任を徹底して果たすということになれば、少なくとも短期的には企業のコストを増大させ、収益の圧迫をもたらします。しかしこれも今後の企業に課せられた避けて通れない役割と責任です。
以上は株式公開企業としての視点からのお話ですが、非公開の企業であっても、また、法的制約の違いはあっても、多かれ少なかれ問われる課題ではないでしょうか。
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